組み込みボードコンピュータ選定

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組み込みボードコンピュータ選定の前に

電子機器に無くてはならない基板は、「ボードコンピュータ」と総称して言われます。産業用ボードコンピュータには、「汎用ボードコンピュータ」と「カスタマイズ・ボードコンピュータ」とあります。「汎用ボードコンピュータ」は、信頼性、可用性および寿命が長く、高温から低温、熱衝撃、高湿度、電磁妨害などの過酷な環境条件のテストが行われた産業用ボードコンピュータを利用できます。「汎用ボードコンピュータ」を利用することにより、製品の市場投入を早くすることが可能です。一方、すべての仕様が汎用ボードコンピュータで満たすことができないケースがあります。すると「カスタマイズ・ボードコンピュータ」として、回路設計、部品選定、アートワーク、製造、テストといった一連の流れが必要となります。

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産業用ボードコンピュータ

産業用ボードコンピュータは、信頼性、可用性および寿命が長く、高温から低温、熱衝撃、高湿度、電磁妨害などの過酷な環境条件などに耐えれる条件が課せられます。レガシーな産業用規格だと、マルチバス(Multibus)などがありますが、VMEやCompactPCI(cPCI)はレガシーなシステムから現在の産業機器にも依然利用されています。

VME   軍事および防衛などの頑丈な環境アプリケーションで提供される高い信頼性の機能として利用されています。
 CompactPCI(cPCI)  産業用シングルボードコンピュータ市場のコア的存在です。堅牢性、モジュール性、堅牢な環境への標準化されたソリューションなどがあります。これらのプラットフォームはSBCと統合されているため、費用対効果の高いソリューションを提供し、長寿を保証します。
   

 

コンピュータ・オン・モジュール(Computer-on-module)

COM Expressにはフォームファクタの違いによって次の2種類が規定されています。

・ ベーシック(125mm×95mmの外形)
・ イクステンデッド(155mm×110mmの外形)
・ 外形では最大寸法を規定しているため、これらより小さければ良く、メーカーによっては小さなサイズで「micro」や「nano」と独自規格の製品シリーズを提供している事例

COM規格にはCOM Expressのような幾つかの派生規格が存在;

ETXexpress  元々レガシーインターフェースを備えサイズも異なっていたが、今ではCOM Expressとほとんど同じ仕様 
 XTX  114mm×95mmのサイズといった従来のETXexpress規格を元にしている。100ピンのコネクタ×4
 PCI/104-Express  96mm×90mmのPCI/104規格でPCIとPCI Expressをサポート
 PCIe/104  96mm×90mmのPCI/104規格でPCI Expressのみをサポート
 Qseven  70mm×70mm、230ピンのコネクタ
 ESMexpress  125mm×95mm(ESMiniでは95mm×55mm)、120ピンのコネクタ×2で高信頼性が求められる用途に用いられる
   

 

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システムオンモジュール(System-on-module)

業界全体の製造業者は、よりコスト効率がよくコンパクトなデバイスを広く開発しており、サイズが小さく、需要の増加に対処するためによりコスト効率を考えています。
システムオンモジュール(System-on-module)とキャリアボードを組み合わせて、シングルボードコンピュータを開発する手法が増えてきました。x86アークテクチャから波及した小型モジュールをCOM(Computer-on-module)と言って、ARMやFPGAから普及した小型モジュールはシステムオンモジュール(System-on-module)と言っている傾向があります。どちらの場合もコンセプトは同じで、SoCやFPGA、メモリ、PMIC(Power Managment)などのコンポーネント小さな基板にして、仕様に応じてキャリアボードを開発することになります。COMとは違う点は、SOM(System-on-module)ベンダごとに、ピン配置が異なり、同じメーカーのシリーズを利用しないと、互換性がキープができないという欠点があります。しかし、SOM(System-on-module)は小さいサイズの製品が多く、小型化を実現したい場合、もっとも近い選択肢の1つになります。

SODIMM   信号のノイズを受けずらいSODIMMインタフェースを利用したシステムオンモジュールです。ベンダーが違うと信号の互換性がないことが多いです。
 DART  イスラエルVarscite社が定義した超小型モジュールのためのシステムオンモジュールの規格です。
 SMARC  ・ 以前はULPCOM(Ultra Low Power COM)として知られていたSMARC(Smart Mobility ARChitecture)は、組み込み技術標準化グループ(SGET)によって発行された別のSoM標準です。
・ 最近の標準では、低消費電力ARMおよびx86 SoMをターゲットにしていますが、ピン数が多いコネクタと要件に応じて2つのボード・ディメンションがあります。
・ これは、COM Express(下記参照)にいくらか類似していますが、低消費電力アプリケーションに予約されています。
・ コネクタ - 314ピンMXM 3.0
・ 寸法:非常にコンパクトな低消費電力設計の82 mm×50 mm、高性能でスペースと冷却の必要性が高いSoC向けに82 mm×80 mm
 EMD  ・ EDM標準は、TechNexionによって作成されたx86およびARM Computer on Modulesのオープンなハードウェアおよびソフトウェア標準です。
・ ARMまたはx86 SoMのフォームファクタを定義
・ コネクタ - 314ピンMXM 3.0
・ 寸法:
   - EDMコンパクト - 82 x 60 mm(ARMのみ)
   - EDM標準 - 82 x 95 mm(ARMおよびx86)
   - EDM拡張 - 82 x 145 mm(x86のみ)
 Apalis  ・ スイスToradexのApalisモジュールアーキテクチャは、インターフェース(電気的特性、信号定義およびピン割り当て)、および主要寸法を含む機械的フォームファクターを定義します。
・ コネクタ - 314ピンMXM3コネクタ
・ 寸法:標準:82 x 45mm、拡張:82 x 56mm
・ アーキテクチャ - ARMとx86
 QSeven  ・ Qseven標準(2.00)の最新版は、2012年9月に組み込み技術の標準化グループによって採用されました。標準は低コスト、低消費電力(最大12W)、レガシーフリー(PCI、ISA 、RS-232またはEIDE)、高速シリアルインターフェイスへのアクセスを提供します。PCI Express、SATA、USB 2.0,1000BaseT Ethernet、SDIO、LVDS、SDVO / HDMI / DisplayPort(共有)、HDA(高品位オーディオ)、I²Cバス、LPC(ロー・ピン・カウント・バス)、CANバス、ファン制御、電源管理信号、バッテリ管理、および5V電源。I²Cバス、ウォッチドッグタイマ、EPI(エンベデッドパネルインタフェース)用の独自のAPIが提供され、サーマルクーリングインタフェースが定義されています。
・ コネクタ - 230ピンMXM2 SMTエッジコネクタ
・ 寸法:70mm×70mm、70 mm×40 mm(μQseven)
・ アーキテクチャ - ARMとx86
   

 

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Intel vs ARM vs RISC-V

x86アークテクチャは、インテル社が命令セットアーキテクチャ(ISA)とそれに伴うプロセッサハードウェアアーキテクチャ制限があります。一方、ARMアークテクチャは、ARM社が積極的に命令セットアーキテクチャ(ISA)とそれに伴うプロセッサハードウェアアーキテクチャを半導体メーカや製造メーカにIPとしてライセンスをして、カスタムASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはSoC(System-on-Chip)が市場にでてきました。ARMベースのシングルボードコンピュータ市場は、低消費電力、マルチコア処理、柔軟性などの特長により、使用される産業分野が拡大しとります。ARMアーキテクチャのデバイスは命令サイズを縮小し、スケーラブルな高性能のために32ビットおよび64ビットの実行ステートを提供します。さらに、これらのプロセッサはハードウェアの仮想化もサポートしています。x86アークテクチャは、プロセッサの進歩の進展と、それらが提供する内蔵のマルチメディア復号化機能により、高い成長機会を見込むことが予想されます。短い応答時間と高いコンピューティングパワーを持った市場に利用が高まります。このように、x86アークテクチャとARMアーキテクチャの特徴が分かれてきており、低消費電力分野でARM、サーバーのような処理能力が高いものはx86アークテクチャと区分けされてきております。組み込みマーケットでは、小型化で低消費電力、そして、ユースケースに合わせた処理能力を有するアーキテクチャとなると、x86ではなく、ARMを選択する傾向が加速しております。


ここで注目しておくべきアークテクチャは、RISC-Vです。かつて、ソフトウエアの世界では、マイクロソフト社Windows embedded系、UNIX系OS(Sunマイクロシステムズ社Solaris/Sun-OS、IBM社AIXやHP社HP-UX)やリアルタイムOSといった特許やライセンスを主体としたビジネスのプレイヤが、フリーOSのLinuxによって、多くの市場シェアを失っていき、ビジネス形態をかえざるを得なかったです。RISC-Vは、オープン標準のRISCマイクロプロセッサの命令セット・アーキテクチャ (ISA) です。 RISC-V ISAはいかなる用途にも自由に利用でき、誰もがRISC-Vチップおよびソフトウェアを設計、製造、販売可能です。そのため、市場では注目をあびており、開発体制が整ってきた場合、ARMを脅かすアーキテチャとしてはRISC-Vとなります。

メインストリームとしては、Intel vs ARM vs RISC-Vが成り立っていくでしょう。

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カスタマイズ・ボードコンピュータ

特殊用途や小型への対応など、カスタマイズ・ボードコンピュータの設計開発の市場は大きいです。ユースケース、複数の技術の融合(プロセッサ、マイコン、FPGA、アナログ、電源管理など)によって開発を行うことが変わります。汎用ボードコンピュータを採用したとしても、コスト意識のなかで、カスタマイズ・ボードコンピュータの設計開発を行うケースがあります。