概 要
Libera Spark ERXR/ERPTは、シンクロトロン機器向けに設計された高性能な電子ビーム位置プロセッサです。この装置は、4チャンネルのビーム位置モニターからのデータを読み取り、周波数および時間領域で処理を行います。リアルタイムデータストリーミングをサポートし、機械保護システムへの統合が可能です。高測定解像度を誇り、精密なビーム制御とデータ解析が実現します。
◆メリット
・ 高測定解像度: 通常、ターンごとのデータレートでサブミクロンのRMS精度を達成
・ プログラム可能な減衰器: 15 dBの入力減衰器と31 dBの内部減衰器を搭載し、信号範囲の最適化が可能
・ 同期機能: 複数の機器を参照クロックで同期でき、シームレスな統合と正確な測定を実現
・ 効率的なハードウェアプラットフォーム: 低消費電力設計で、騒音を発生せず、強制冷却が不要
・ 制御システムとの互換性: EPICSやTANGOなどの制御システムに即座に対応し、他のインターフェース(Python、HTTP、telnet)もサポート。
・ メンテナンスフリー: 日常的なメンテナンスが不要で、運用コストを削減
・ ソースコード提供: ユーザーが独自のカスタマイズや拡張が可能
仕 様
Libera Spark ERXR/ERPTの仕様
◆ハードウェア仕様
・ ビーム位置モニター: 1つのビーム位置モニター(BPM)をサポート(4チャンネル)
・ サンプリング周波数: 最大125 MHzで、14ビットのA/D変換を実施
・ 入力信号範囲:
・ 最大入力信号:
・ ERXR:
・ ERPT:
・ 減衰器: プログラム可能な31 dBの内部減衰器を含む15 dBの入力減衰器
・ 温度ドリフト:
・ ERXR: 典型的に2 μm/°C
・ ERPT:
◆データ処理
・ リアルタイムデータストリーミング: 10 kHzでのデータ出力が可能
・ ターンごとのデータレート:
・ ERXR: RMS精度0.3 μm
・ ERPT: RMS精度1 μm
・ 高速データレート: 10 kHzのデータで、ERXRは0.04 μm、ERPTは0.1 μmのRMS精度
・ 遅いデータレート: 10 Hzのデータで、ERXRは0.02 μm、ERPTは0.05 μmのRMS精度
◆インターフェース
・ 電源供給: Power over Ethernet (PoE)
・ 同期信号: 電気的な3つの入力による同期機能
・ ソフトウェア互換性:
・ EPICS: libera-ioc
・ TANGO: libera-ds
・ MATLAB/LabVIEW: libera-telnet-server
・ HTTP/WEB: libera-http-plugin
・ C++: libera-mci
・ Python: libera-pymci
◆物理的特徴
・ 冷却方式: パッシブ冷却
・ 効率的なハードウェア設計: 低消費電力で動作し、騒音が発生しない設計
これらの仕様により、Libera Spark ERXR/ERPTは高精度なビーム位置測定とデータ処理を実現し、シンクロトロン施設において重要な役割を果たします。
ユースケース
Libera Spark ERXR / ERPTのユースケース
1. シンクロトロン施設
・ 用途: 電子ビームの高精度測定と制御を行い、ビームの安定性を向上
・ 効果: ビーム品質を維持し、実験結果の信頼性を高める
2. 高エネルギー物理学実験
・ 用途: 粒子衝突実験におけるターンごとのビーム位置測定
・ 効果: 実験データの精度向上、新しい物理現象の発見を促進
3. ビームダイナミクス研究
・ 用途: ビームの動的特性を観察し、データ収集と解析
・ 効果: 最適なビーム運用条件を確立し、ビームの特性を理解
4. 機械保護システムの統合
・ 用途: ビームの異常を検知し、機械保護システムと連携
・ 効果: 機器の損傷を防ぎ、運用の安全性を確保
5. 医療用加速器
・ 用途: 放射線治療装置でのビーム位置制御
・ 効果: 患者への放射線照射精度を高め、治療効果を最大化
6. 材料加工および産業応用
・ 用途: ビームを利用した材料加工や表面処理でのビーム制御
・ 効果: 加工精度の向上と生産効率の改善を実現
7. ビーム制御システムの開発
・ 用途: 新しいビーム制御アルゴリズムの開発や検証。
・ 効果: 先進的なビーム制御技術を研究・実装するためのプラットフォームを提供
これらのユースケースにおいて、Libera Spark ERXR / ERPTは高精度なビーム測定と信号処理を提供し、さまざまな科学研究や産業アプリケーションでの重要な役割を果たしています。
パフォーマンス
Libera Spark ERXR / ERPTのパフォーマンス
1. 測定精度
・ 高解像度: ターンごとのデータレートで、通常サブミクロンのRMS精度を達成
・ ERXR: RMS精度は0.3 μm
・ ERPT: RMS精度は1 μm
2. データストリーミング
・ リアルタイムデータストリーミング: 最大10 kHzでのデータ出力が可能
・ ERXR: 高速データのRMS精度は0.04 μm
・ ERPT: 高速データのRMS精度は0.1 μm
3. 減衰器のプログラム可能性
・ 信号範囲の最適化: 15 dBの入力減衰器と31 dBの内部減衰器が搭載されており、最適な信号範囲を調整可能
4. 同期機能
・ 複数機器の同期: 参照クロックを使用して複数の機器を同期させ、正確な測定を実現
5. データ処理能力
・ サンプリング周波数: 100-125 MHzのPLL制御で信号をサンプリング。生のADCデータをバッファに保存し、時間領域処理ブロック(TDP)と周波数領域処理ブロック(DDC)を使用して処理を行う
6. バッファとデータ保存
・ 循環バッファ: ターンごとのデータを循環バッファに記録し、数百万ターン分のデータを保持
・ 柔軟なデータ取得: トリガー、オンデマンド、±オフセットなどのモードでデータを読み出し可能
7. 消費電力と冷却
・ 低消費電力設計: Power-over-Ethernetによる電源供給を受け、騒音が発生せず、強制冷却が不要
これらのパフォーマンス特性により、Libera Spark ERXR / ERPTはシンクロトロンおよび高エネルギー物理学の研究において、高精度で信頼性の高いビーム位置測定を提供します。
採用事例
Libera Spark ERXR/ERPTは、以下の研究所や施設で広く使用されています:
・ ALBA - シンクロトロン光研究所(CELLS)、スペイン
・ ANKA - カールスルーエ工科大学(KIT-FZK)、ドイツ
・ APS - アルゴンヌ国立研究所(ANL)、アメリカ
・ BESSY II - ドイツのヘルムホルツセンター・ベルリン
・ CHUBU=AICHI SYNCHROTRON - 名古屋大学、日本
・ Diamond Light Source - ダイヤモンド光源、イギリス
・ ESRF - 欧州シンクロトロン放射線施設、フランス
・ HiSOR - 広島シンクロトロン放射線センター、日本
・ PF - 高エネルギー加速器研究機構(KEK)、日本
・ SLRI - シンクロトロン光研究所、タイ
・ SPEAR3 - スタンフォード線形加速器センター(SLAC)、アメリカ
・ TPS - 国家シンクロトロン放射線研究センター(NSRRC)。台湾
・ UVSOR facility - 自然科学研究所分子科学研究所、日本
これらの施設では、Libera Spark ERXR/ERPTが高精度なビーム位置測定とデジタル信号処理を提供し、様々な科学研究や実験において重要な役割を果たしています。