概 要
Libera Syncは、加速器システム内の複数の機器を正確に同期させるために設計されたシステムで、フェムト秒レベルのジッタクロック信号を用いて、高精度な同期を実現します。特に、長距離でのポイントツーポイントリンクにおいて、低位相ドリフトを維持しながら高い同期性能を提供します。これにより、加速器全体のパフォーマンスや安定性が向上します。
◆メリット:
・ フェムト秒ジッタクロックによる高精度同期
・ 低位相ドリフトでの長距離同期リンク
・ 信頼性の高い設計: 高性能な電子部品と光学部品を使用
・ メンテナンスが不要な自己維持的動作
・ 業界標準の2U 19インチフォームファクタに対応し、加速器システムに容易に組み込むことが可能
◆ハードウェア仕様:
・ フォームファクタ: 2U 19インチラックマウント設計
・ 同期精度: フェムト秒レベルのジッタ
・ 低位相ドリフト: 長距離リンクにおける優れた安定性
・ 内部環境制御: 高信頼性を維持するための堅牢なメカニカル設計
・ 電子部品: 高性能電子および光学部品により、安定した動作を確保
◆その他:
Libera Syncは、機器同士の同期に不可欠な役割を果たし、加速器の最適な運用を支援します。高精度なタイミングが求められる場面で、特にその強みを発揮します
仕 様
Libera Syncは、加速器システムでの高精度同期を実現するために設計され、フェムト秒レベルの精度を持つクロック信号と長距離通信機能を備えています。ここでは、ハードウェア仕様、インターフェース、コネクタ仕様を含めて説明します。
ハードウェア仕様
フォームファクタ:
・ 標準的な2U 19インチラックマウント設計で、加速器の既存インフラに簡単に統合可能です。機械的に堅牢な設計により、長期的に信頼性の高い運用が可能です。
同期精度:
・ フェムト秒レベルのジッタクロック信号により、非常に高精度な同期を実現。これにより、複雑な加速器システム全体で正確なタイミング制御が行われます。
内部環境制御:
・ 内部環境の温度や湿度を厳密に管理し、電子部品の最適な動作環境を維持します。これにより、安定性と長期耐久性が確保されます。
インターフェース
光ファイバー通信:
・ 長距離のポイントツーポイント通信に対応し、光ネットワークを介して複数のLibera機器間でビーム位置データを高速に交換します。これにより、精密なデータ同期が可能です。
データリンク:
・ 光または銅ケーブルによる接続が可能で、システムの拡張性を確保しつつ、複数の機器間でリアルタイムの軌道データ同期が行われます。低位相ドリフトにより、遠隔地の機器間でも高い同期精度を維持できます。
FPGA処理:
・ FPGAベースの信号処理を使用して、受信したデータのリアルタイム処理とタイミング補正を実現。これにより、ビームの位置データの正確なフィードバックが提供されます。
◆コネクタ仕様
SFP(Small Form-factor Pluggable)スロット:
・ データ伝送に使用され、最大30kS/sのデータレートで光ファイバーモジュールを介してリアルタイムの軌道データをやり取りします。これにより、複数の機器間での高速なデータ通信が可能です。
光ファイバーおよび銅線接続:
・ 光ファイバーまたは銅線を使用して機器間のデータリンクを確立し、長距離通信でも安定した同期を保ちます。これにより、加速器内外の機器をシームレスに統合できます。
RS-485インターフェース(SERモジュール用):
・ GDXモジュールから直接制御されるRS-485インターフェースがあり、複数の磁石コントローラーに対して修正信号を送信します。ローカルおよびグローバルフィードバックに対応します。
◆その他の特徴
拡張性:
・ Libera Syncは、他のLiberaシリーズ機器と簡単に統合可能で、システム全体での協調動作が可能です。光通信と高性能FPGAによって、精密な同期とタイミング制御を実現します。
このように、Libera Syncは、加速器システムにおける高精度な同期とデータ通信をサポートし、複雑なビーム制御を可能にする強力なツールです
ユースケース
Libera Syncは、加速器や大型科学施設で高精度な同期とタイミング制御が必要な場面で使用されます。以下に具体的なユースケースを挙げます。
1. 加速器システムの機器間同期
Libera Syncは、加速器の複数のデバイスやシステムを高精度に同期させるために使用されます。特に、フェムト秒レベルのジッタクロック信号を使用して、ビームのタイミング制御を行い、機器間で正確な同期を維持します。これにより、ビームの安定性と加速器の効率が向上します。
2. 長距離データ同期
加速器内の複数のセクションやサブシステム間で、長距離のデータ同期が求められる場面で使用されます。Libera Syncは、光ファイバーを利用して長距離にわたる低位相ドリフト通信を実現し、機器間で正確なデータのやり取りが可能です。
3. フェムト秒精度のタイミング制御
高精度の実験や観測が行われる施設で、Libera Syncはフェムト秒単位のタイミングが必要なアプリケーションで使用されます。これにより、ビームの位置やタイミングが正確に調整され、実験の成功率や測定精度が向上します。
4. 自由電子レーザー(FEL)やシンクロトロン施設での使用
FELやシンクロトロン加速器などの高度な光源施設では、ビームの安定性が非常に重要です。Libera Syncは、これらの施設で、軌道のリアルタイムフィードバックやビーム位置データの正確な同期に貢献し、長期的な運用の安定性を提供します。
5. グローバルフィードバックシステム
加速器の複数のセクション間で、ビームの位置やタイミングをリアルタイムでフィードバックするために、Libera Syncは使用されます。これにより、全体のビーム軌道を安定化し、実験や測定の精度が向上します。
このように、Libera Syncは、加速器や大型研究施設における高度なビーム制御システムの中核として機能し、精密なタイミングと同期を必要とするアプリケーションで広く使用されています
採用事例
Libera Syncは、以下の世界中の著名な加速器や研究施設で使用されています。
BEPC II – 高エネルギー物理研究所(IHEP)、中国
CLARA – STFCダーズベリー研究所(STFC ASTeC)、イギリス
SwissFEL – ポール・シェラー研究所(PSI)、スイス
FERMI – エレットラ・シンクロトロン・トリエステ、イタリア
LCLS – スタンフォード線形加速器センター(SLAC)、米国
SKIF – ブドカー核物理学研究所(ロシア)
SSRF, SXFEL – 上海シンクロトロン放射施設(SINAP)、中国
TLS, TPS – 国立シンクロトロン放射光研究センター(NSRRC)、台湾
XFEL – 浦項加速器研究所(PAL)、韓国